今回は、安全と安心の違いについて解説するよ。
安全と安心って一緒じゃないの?安全で安心な生活なんて言葉も聞くよ。生産現場においても、安全で安心な職場生活を行うことが良いように感じるんだけど。
安全で安心な職場を目指すことはもちろん問題ないよ。ただし、安全と安心は似ているようで考え方が違うんだよ。
ん~、でもやっぱり分からないかなぁ。安全と安心は一緒に考えているような気がするんだけど。
今回は、安全と安心の違いと、安全と安心を一緒に考えるべきではない理由についても解説するよ。
了解です。お願いします。
安全と安心の違い
まずは、安全と安心の定義について確認してみよう。
安全:許容できないリスクがないこと<ISO/IECガイド51>
安心:気にかかることがなく、心が落ち着いていること。<大辞泉>
定義だけではよくわからないんだけど。
そうだよね。安全と安心が大きく違う点はこれだけ覚えていれば十分だよ。
安全とは : 科学技術やデータを用いて作り上げていく客観的なもの
安心とは : 主観的な判断が主であり、信頼するという人間の心に強く関係する
安全であっても安心できない例や、逆に安心しているが実は安全でない例もあります。
確かに客観的と主観的はまったく違うものだね。
なんとなく分かってきたよ。
日ごろ「安全」を管理する担当者であってもスパッと意味が出てくる人は多くはないよ。
また、安全管理ではなく、安心と混同して考えてしまう例もあるよ。
具体例を見ていきましょう。
具体例:豊洲市場移転のトラブル
豊洲市場は、東京都江東区にある公設の卸売市場です。2018年に開場しました。以前の築地市場から豊洲市場へ移転を行ったのもこの時期になります。
「安全」と「安心」というキーワードがこのとき大きな話題になりました。
築地市場は、昭和10年に運営が開始され、老朽化や水害への対策などで課題がありました。
そのため、新たに豊洲市場を建設し、移転することが決まりました。
トラブルが起きたのは、建設が完了した2016年のことです。豊洲市場の土壌汚染問題が出てきました。
豊洲市場建設にあたっては、土壌汚染対策法と東京都環境確保条例の安全基準にのっとり建設がすすめられ、完成していました。
しかし、地下水に有害物が含まれており、その物質が気化し豊洲市場へ不安を与えるという部分が、当時東京都知事に就任したばかりの発言でした。
地下水については、コンクリートやアスファルトで覆われているため、安全基準では問題がないという見解です。
しかし、不安だと主観的なもののとらえ方でした。
結局、安心が確保できないために、豊洲市場移転は延期となり、維持費などに莫大な税金が使われることになりました。
結局、今現在豊洲移転は完了していて当時の問題は今はそこまで問題なっていないね。でもあのときは確かに不安だったよ。
「安全であってもの安心できなかった」その典型例だね。
ただし、安心は主観的な判断になるため、そのときの人の気持ちや風潮などによって大きく変わってしまうということになるよね。
事業所・工場での安全管理においても、許容できるリスクまで下げることを目指すなかで、安全と安心は混同しがちなんだよ。
リスクコミュニケーションの重要性
現場のリスク低減活動において、安全対策を検討する場面でも、安全と安心を混同することは評価がぶれる一因になります。
より客観的に十分な対策(例えば、設備的な対策)を行うことでリスクを下げていく活動が必要です。
しかし、製造業(メーカー)であれば、会社側と消費者側という立場も考えられます。
製品は、安全基準を満たして製作しているものの、それを使う消費者が安心できない!という事例は多くあります。
そのようなときに「リスクコミュニケーション」が重要になってきます。
リスクコミュニケーションとは、その言葉通りに、製造側(または管理者側)と消費者側(または現場作業者側)でリスクに対する情報公開や残留リスクの説明を通じて、合意や納得を形成していくものです。
リスクという科学的な概念を対話をするなかで人間的な行動に訴えかけ、お互いに納得する形こそが「安全」と「安心」をつなげることになります。
まとめ
今回は、「安全」と「安心」の違いについて説明したよ。
安全とは : 科学技術やデータを用いて作り上げていく客観的なもの
安心とは : 主観的な判断が主であり、信頼するという人間の心に強く関係する安全と安心は、混同しがちではあるが、リスクコミュニケーションによって「安全」「安心」を共存させていくことも必要。
安全担当者として、事業所の安全基準などを客観的に判断できるように設定していくことに心がけるよ。
そうだね。とは言っても、リスク評価についても主観的な要素が入ってしまうことが十分あり得るから、しっかりとコミュニケーションをとりながら、納得のいく形を目指しましょう。
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