- 災害が起こったあとの対策検討がスムーズに進む方法を教えてください。
- 災害が起こったあとになかなか対策が出てこないんですけど。
- 元請けや親会社に説明をするんですけど、なかなか承認されなくて困っています。
このような質問を受けたことがあります。
今回は、災害対策Part1として上記を解決できる重要なたった一つのことを解説します。
結論:もっとも重要なたった一つのことは、「事実の確認」
不幸にも災害が起こってしまった場合、対策検討にかける時間でどこに一番時間をかけていますか?
なぜなぜ分析で原因を深堀りすることです!
いやいや、人の介在しない設備対策を時間をかけて検討することです!
と、いろいろな声が聞こえてきそうです。
原因の深堀りや、対策検討に時間をかけることが悪いことではありません。
ただ、私は違うと思っています。
一番時間をかけるところは、「事実の確認」です。
理由は、原因の深掘りや対策検討は、すべて事実に対する検討になります。
この「事実の確認」をないがしろにしたまま、原因や対策検討に入っている職場を多くみます。
また、例えば本社という立場で災害の一報や速報を受けたときに、事実の確認もせずに
「惰性回転時に手を出してケガするなんて、どんな教育してるんだぁー!」
みたいな、表面だけの会話と対策になります。
そのような光景を私はたくさん見てきました。
そして、対策を立てても守れない、定着しない職場がたくさんありました。
「事実の確認」の悪い例
ここでは、実際に体感した事実の確認の悪い例をいくつか紹介したいと思います。
1.被災者のルール違反をただ叱って、被災者を悪者にする
災害対策検討において安全担当者・管理者が、最も行ってはいけない行動です。
災害が長いあいだ起こっていない職場などでよくみられるケースです。
安全担当者や管理者が、初めて労働災害の対応を行う場合は、冷静さを失い、なぜ起こったのかをすぐに追及してしまいます。
その結果、起こった事象について、表面だけの情報で判断をしてしまいがちになります。
2.被災者へのヒヤリングを行わずに、被災状況を見ただけで対策検討に入る
被災者は、救急車などで病院にいくため、まずは現場確認やグループのかたとの対話がスタートします。
被災者が治療でなかなか戻ってこれない場合があります。
そのような場合は、時間的な観点から応急対策などは問題ありませんが、しっかりと被災者からのヒヤリングや事実を確認したうえで対策検討を行いましょう。
3.責任を追及することばかりを考え、対策ありきで対策検討を進める
災害が発生した場合に、管理者や現場は「起こってはいけないことが起きた」という考えから、
事実の確認ではなく、責任逃れや責任追及を行うことがあります。
そのような場合では、対策ばかりに目が行き、事実が捻じ曲げられたり、異なった事実が報告されることがあります。
まずは、責任追及ではなく、事実の確認を淡々と行うことが求められます。
「事実確認」に必要なヒヤリングスキルと手法3選
ここでは、事実確認ヒヤリングを適切に実施する手法を3つご紹介します。
災害発生後は、現場も動揺しています。
安全担当者や管理者は、下記のことを意識してみてください。
1.個別(被災者)ヒヤリング
重大な事故を起こしたかたは、「申し訳ない」という心理になっています。
そのため、ルール違反をした理由などを正確に発言することが難しい状況にあります。
また、無理やりに思い出させようとすると、記憶があいまいであってもつじつまを合わせようと努力することもあります。
被災者への個別ヒヤリングについては、責任追及ではないことを十分に説明し、納得してもらったうえで、信頼関係を作り、事実を淡々と確認していくようにしましょう。
2.グループ(職場)ヒヤリング
グループへのヒヤリングの際は、クローズドクエスチョンではなく、オープンクエスチョンを多用しましょう。
グループ内では、各人が感じていることや状況が異なる可能性があります。
聞き手も「間違えた行動をしたのですね」ではなく、「どのような行動を行いましたか」と聞きましょう。
グループでの作業の場合は、いろいろな作業や立場の方々がいますので、当時の作業や、普段の作業、風土なども意識したうえで、さまざまな方からヒヤリングを行うようにしましょう。
3.調査内容とフォーメーションを決めておく
事故調査やヒヤリングについては、一人で実施する場合は、抜け漏れや偏見が入ってしまいます。
そのため、調査内容(ヒヤリング内容)や、ヒヤリングを行うフォーメーションを事前に決めておくことが重要です。
調査内容の具体例を下記します。参考にしてみてください。
- 作業内容:作業名、作業形態、共同作業者の内容
- 被災者本人の体調、心理状況
- 設備の安全装置の状況
- 作業標準や資格、過去の災害事例展開
- 作業指示の状況、打ち合わせの実施状況
- 要員配置状況、作業準備の状況 などなど
フォーメーションについても、被災者へのヒヤリングとグループへのヒヤリングを別に行うなどの取り決めも重要なものとなります。
あくまで、警察の事情聴取のような責任追及にはならずに、事実の確認を淡々と行うことに徹しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、災害対策においてもっとも重要な「事実の確認」について解説しました。
災害発生時は、動揺や焦りなどにより冷静に対応ができない場合も多くあります。
安全担当者や管理者は、そのようなときこそ冷静な対応や、事実確認を実施することにより、原因の深掘りや本質的な対策を実施することができます。
私自身も災害発生後に、元請けや親会社へ説明を何度も行ってきました。
その際に、事実がしっかりと確認できているかいないかで原因や対策へのつながりや客先への納得感が随分と異なります。
ぜひ、参考にしていただければ幸いです。
安全な職場形成に向けて、ともに頑張っていきましょう。
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