- 実際、災害が起きてみないと安全対策が進まないんですよね。
- 過去の災害対策を実施してはいるものの、なかなか見えない未来の改善は難しくないですか?
- 一旦、過去の災害対策などは全部行ったので、安全活動することがないんですけど!
このような声を聞くことがあります。
労働安全衛生法(1972年)制定以降、様々な安全活動が継続されるなかで、労働災害件数は、みるみるうちに減少をしてきました。
過去の災害をもとに法律が改正されたり、各事業所では災害対策の横展開や教育の拡充を行い、自らの職場では災害が起きることが少なくなってきたように感じているのではないでしょうか?
しかしながら、数年に1度であったとしても、労働者を災害から守ることは企業の命題でもあります。
今回は、Safety-Ⅱという考え方をもとに、これからの未来へ向けての安全管理を解説していきます。
Safety-ⅠとSafety-Ⅱとは?
E.Hollnagel先生は、Safety-Ⅰが今までの安全戦略であり、今後は、Safety-Ⅱという安全戦略が必要ではないでしょうか?という提言をおこないました。
- Safety-Ⅰ:リスクに基づく安全戦略
- Safety-Ⅱ:レジリエンスによる安全戦略
Safety-Ⅰは、安全に関する古典的な考え方であり、「物事がうまくいかない状態を阻止する」ということです。つまり、Safety-Ⅰは”制御”の要素が強くなっています。
一方、Safety-Ⅱは、「物事を適正に進める」状態であり、「予想できていたことだけではなく、予想できない条件下でも、求められている動作を継続する」能力を重視しています。
例を示してみます。
動物園では、ライオンに対して徹底的なリスク対策を行う(Safety-Ⅰ)。それに対して、ライオンが暴れだしたり、逃げ出したりした場合の事態収拾については、レジリエンスが必要である(Safety-Ⅱ)。
Safety-Ⅰのデメリット
Safety-Ⅰの考え方は、「失敗」がベースになっている。
過去の災害やヒューマンエラーなどがその代表例である。
うまくいかなかったこと、あるいはリスク(うまくいかない可能性があること)への対応であるため、安全マネジメントのアプローチが受動的になりやすい点がデメリットとしてあげられます。 ※リスクアセスメントの一部で能動的な部分はある。
そしてなにより、
「失敗」や「ミス」に目をむけているため、特定の人を叱責していまい、彼らの協力しようとする意欲を減衰させてしまうこと
が一番のデメリットになります。
Safety-Ⅱのメリット
Safety-Ⅱは、「現状(うまくいっている部分)」に目を向けている。
現実では、人間が柔軟に適応して動く(レジリエンス)ことが良く、人間は負の存在ではない。
言い換えれば、作業がどう行われるかに厳しい制約を与えることによって、安全を管理することはできない!
という発想が前提になっています。
Safety-Ⅱでは、パフォーマンスの変動(逸脱、違反、不履行)をネガティブに解釈せず、現場での臨機応変な対応の精度を上げる活動である。
つまり、Safety-Ⅱのメリットは、現状のうまくいっていることに目を向け、安全マネジメントを能動的に作用させる効果があるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
私自身は、Safety-Ⅰを完全否定するのではなく、
崩れる前の制御(Safety-Ⅰ)に加えて、崩れた後の制御(Safety-Ⅱ)も必要であり、
どちらも行っていく必要があると考えています。
会社のなかでも各事業所や職場によって、安全課題は異なります。
全体の災害件数は年々減少傾向にありますが、各社では災害件数の下げ止まりが起きている事業所も少なくないと思います。
そんなときに、ぜひSafety-Ⅱの考え方を取り入れることを考えてみてください。
Safety-Ⅱの考え方の根幹であるレジリエンスエンジニアリングについては、別の投稿にて詳しく説明していきたいと思います。
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